- 認知症 項目一覧
認知症概要
認知症の診断基準
認知症の主な原因
認知症の治療
認知症の予防と早期発見のポイント
認知症の方への対応・相談機関等
- 認知症概要
◆認知症とは?
身体に何らかの原因があって
脳の働きが低下した状態です
加齢による脳の老化とは異なり
日常生活や社会生活に支障を
きたすことが多く治療や介護
などが必要な状態です。
原因によっては症状が急激に
進んだりする場合もありますが
早期に治療することにより進行
を抑えたり症状を軽くすることも可能です。
◆認知症の代表的な症状
認知症の代表的な症状には
記憶障害、見当識障害、判断力
の低下などがあります。
●記憶障害
・日常生活のなかで、寸前の出来事が思い出せない
・同じことを何度も繰り返したり尋ねたりする
・置き忘れやしまい忘れがおおくなり、いつも探し物をする
・今日の日にちや時間などを憶えられない など
●見当識障害
現在の自分自身および自分が
おかれている状況についての
認識の障害
自分がおかれている時、場所、
周囲の人および状況を正しく
認識しているか否かによって判断される。
(例)
場所を間違えたり、昼と夜を
間違えたり、人の名前を間違うなど
思考、記憶、判断などの能力と
密接な関係があり、これらの能力
が障害された時に見当識障害が起こる。
●判断力の低下
日常生活など今まで処理していた問題が出来なくなる。
(例)
お金の支払いが出来なくなった
り、真冬に薄着で外出したり、
火事になったらどうするか等、
一般的な問題の処理が困難になる。
- 認知症の診断基準
◆認知症の診断基準の方法
認知症の診断基準にもいろいろ
あるようですが、比較的多く
用いられている基準には以下の様な方法があります。
DSM-Ⅳ、ICD-10、DSM-Ⅲ-R
改訂長谷川式簡易知能評価スケ
ール」(HDS-R)
ミニメンタルステート検査
(MMS、MMSE) など。
上記の中で一般的な判断基準の
DSM-Ⅳについて簡単にまとめてみました。
◆DSM-Ⅳについて
DSMとは、Diagnostic and
Statistical Manual of Mental Disorders
精神障害の診断と統計の手引き
精神疾患診断統計マニュアルなどの意味。
DMSはアメリカ精神医学会が定めた基準になります。
認知症の種類によって定義は
異なる様ですが、共通している
診断基準を簡単にまとめてみました。
●記憶障害があること
記憶障害には新しいことの学習
障害と以前に学んだ情報の想起障害があります。
●記憶障害以外の認知障害
(失語、失行、失認、遂行
機能障害)が少なくとも一つはあること
失語は思うように話せなくなること。
失行は麻痺や外傷などがないにも
かかわらず、思うように手足を
動かすことが出来ないこと。
失認は感覚機能(視覚、聴覚、
触覚など)は正常に働いても、
それらを正しく認識できないこと。
遂行機能障害(実行機能障害)
は筋道を立てて物事を実行することができない等のこと
●社会生活や仕事、人間関係等
に支障をきたしていること
●上記の症状はせん妄(軽度~
中等度の意識障害)の時にのみ見られるものではないこと
●上記の症状の原因が身体的
疾患からくるものであるという検査データ等があること
◆軽度認知障害(MCI)について
アルツハイマー病などの前駆
状態のことで、認知症には未だ
なっていない状態のこと。
症状が軽いうちに治療や予防を
開始すると進行を遅らせたり、
発症を防ぐ可能性が高くなる為
最近注目されています。
- 認知症の主な原因
認知症の主な原因には脳血管障害
やアルツハイマー等ありますが、
はっきりとしたメカニズムはまだ
解明されていない部分も多い様です。
◆脳血管性認知症
●原因
脳梗塞や脳血栓、脳内出血等がベース。
●症状
障害部位によって様々。
手足の麻痺やしびれ、記憶障害
や判断力の障害などある。
感情失禁がみられることが多い。
感情失禁とは、些細なことで泣い
たり、笑ったり、怒ったりする
状態で感情のコントロールがうまく調節できないこと。
人格は比較的保たれることが多い。
脳卒中の発作がおこるたびに
段階的に進行することが多い。
◆アルツハイマー型認知症
●原因
アルツハイマー病の原因はまだ
はっきり判っていませんが脳の
神経細胞が減少して脳が萎縮
する(小さくなる)病気です。
脳が萎縮することで様々な症状がでてきます。
●主な症状
・記憶障害
・知能低下
・人格の変化
痺れや運動障害などは初期には少ない。
本人は病気だという自覚がないのが特徴の様です。
◆レビー小体型認知症
●原因
原因は不明。
脳の神経細胞が減少する病気。
レビー小体とはタンパク質の塊で
異常な構造物のこと。
大脳皮質に広くたまると、レビー
小体認知症に、中脳にたまると
パーキンソン病。
●主な症状
アルツハイマー型認知症の症状
に似ているところもある。
特徴としては、運動機能障害や
自律神経障害もみられること。
初期の段階で幻覚、特に幻視が
あらわれることが多い。
例
部屋の隅に子どもがいる、壁に虫
が這っている、ふとんが人の姿に
見えるなどの症状が多い。
◆前頭側頭型認知症
●原因
原因となる主な疾患には、ピック病などがある。
大脳の前頭葉や側頭葉が委縮する病気。
●主な症状
記憶障害より人格の変化や異常行動が目立つ。
◆その他
パーキンソン病、慢性硬膜下
血腫、脳腫瘍、頭蓋内新生物
正常圧水頭症、低酸素血症
肝性脳症、尿毒症性脳症、
ビタミン欠乏症、電解質異常
甲状腺機能低下症、ウイルス
性脳炎の後遺症、エイズ
クロイツフェルドヤコブ病(狂牛病と類似)など。
◆メモ◇~~~~~
若年性認知症とは?
18歳から64歳で発症する認知症の総称。
中核症状とは?
記憶障害、見当識障害、失語
失行、失認、遂行機能障害等
周辺症状とは?
幻覚、せん妄、異常行動、妄想など。
三大認知症とは?
脳血管性認知症、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症のこと
◇◆◇◆~~~~~
- 認知症の治療
◆脳血管性認知症
脳血管障害による認知症の場合
は、脳梗塞や脳出血等の再発
防止や血栓防止等に対する薬物
療法が大切になります。
又、脳血管障害を引き起こす
リスクが高いといわれる高血
圧や糖尿病、脂質異常症(高脂
血症)、不整脈等の予防や治療も必要です。
◆アルツハイマー型認知症
アルツハイマーによる認知症の
場合は、症状の改善や進行を
遅らせる薬も出てきているようです。
症状の軽い早期の段階で治療を
開始すれば効果が高いといわれています。
原因はまだ解明されていない為
症状に対する治療、対症治療法になります。
薬品名例
一般名:塩酸ドネペジル
商品名:アリセプト
アルツハイマーの研究も進んで
きているため、より効果の高い
治療や予防法が期待されています。
◆レビー小体型認知症
認知障害に対する治療
薬品名例
一般名:塩酸ドネペジル
商品名:アリセプト
パーキンソン症状に対する治療
抗パーキンソン病薬
抗コリン性薬剤
ドパミン前駆物質 など
薬品名例
一般名:レボドパ
商品名:アリセプト
一般名:塩酸トリヘキシフェニジル
商品名:アーテン など
自律神経障害に対する治療
血圧コントロール など
◆その他
原因となる疾患を治療すること
により、認知症が治る場合もあります。
慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、
正常圧水頭症等は外科的な治療で治る場合も。
低酸素血症、肝性脳症、
尿毒症性脳症、ビタミン欠乏症
電解質異常、甲状腺機能低下症
なども内科的な治療で治る可能性もあるようです。
原因に対する治療も大切ですが、
同様に心理面での適切な介護や
環境なども重要になります。
- 認知症の予防と早期発見のポイント
◆認知症の予防
●基礎疾患の把握
原因となる基礎疾患の早期
発見、早期治療が大切になります。
●日常生活等の改善
生活習慣病と同様にバランス
とのとれた食事や適度な運動、
規則正しい生活などが大切になります。
●転倒防止
特に顔や頭をぶつけない様に注意します。
頭部外傷(硬膜下血種など)の防止。
●脳の老化防止とストレス対策
興味や関心、趣味をもつ
会話を楽しむ、日記をつける
手紙を書く、簡単な計算、
声に出して本を読むなど。
●うつの防止
うつ状態が続くと脳の老化が
促進すると言われています。
精神的ショックや環境の変化等
があった場合は、特に注意が必要です。
周囲の人が温かく見守ることが大切になります。
◆認知症の早期発見のポイントは?
生活を共にしているご家族が
気がつく主な気になる言動を簡単にまとめてみました。
・同じことを何度も言ったり、聞いたりする
・普段出来ていたことが困難になる
・通い慣れている道が分からなくなる
・水道の蛇口などのしめ忘れが多くなる
・怒りっぽくなる
・疑い深くなる
・いつも使用している物の置き
忘れ、しまい忘れが多くなる
等の症状が多いようです。
加齢に伴う症状はゆっくりと
進行し、日常生活にはあまり
支障がないことが多いですが
急に症状がひどくなる場合は注意が必要です。
症状がひどくなる要因とし
病気以外にストレスも関係してきます。
今まで自分で対処できたスト
レスも老化により徐々に低下
してくると、一時的に症状が
ひどくなる場合もあります。
ストレスの原因が取り除かれ
れば症状が軽くなる場合もあります。
原因が病気にあるのかストレ
スなどの病気以外にあるのか
判断するためにも「いつもと
違う」と、ご家族の方が気に
なりだした時点で、早めに
医療機関などに相談された方がいいと思います。
疑い深くなったり、怒りっ
ぽくなったりする症状が強く
なると、一緒に生活されてい
るご家族の感情も同じような
波長になってしまうこともあります。
家族のイライラがさらにスト
レスになり症状を悪化させる場合もあます。
お互いの為にも早めに受診されたほうが安心だと思います。
- 認知症の方への対応・相談機関等
◆認知症の方の対応 例
●症状が軽い場合は日常生活の
安全面に気をつけて見守る程度
●症状が軽度から中程度の場合
は一緒にいる時間を増やす
ストレスの軽減、不安や心配事の
軽減、会話(明るい話題を話す)
気分転換(散歩・買い物・ドラ
イブなど)、医療機関や施設等
を利用、介護サービスを利用等。
●症状が中程度から重い場合
は、複数人で介護する
出来れば本人の安心する人に協力を得る。
本人の子供や孫などが理想。
医療機関や施設などを利用
介護サービスを利用など。
●症状が重い場合は専門機関の
利用を増やす
中には施設を利用して症状が悪化
する方もいらっしゃいます。
そういう場合は家庭での介護を
中心としたサービスの利用を増や
したり身近な人に協力を得たり等
安心して過ごせるような環境作り
が大切な場合もあります。
◆介護する人の負担軽減
認知症の程度や原因にもよる
と思いますが、認知症と診断
された場合は家族や親戚など
身近な人に話をして、協力を
得ることが必要だと思います。
認知症の方を一人でお世話
するのは無理なので一緒に暮ら
す人の負担が重くならない様に
することが大切です。
その対策の例として
・兄弟姉妹や子供など気軽に話せる人に協力を得る
・介護サービスを利用
・近くの医療機関や施設を活用する
・電話などでいつでもどこでも相談できる機関を利用する
・家族の会などに参加
などがあります。
お世話する人の心身の状態が
良くないと良いケアが困難になります。
◆認知症の相談機関など
●かかりつけ医
●認知症の専門外来や認知症疾患医療センター
●住んでいる所の役所(福祉課など)や保健センター
地域包括支援センターなど
東京都では「かかりつけ医・認知
症サポート医名簿」の公表をしています。
認知症コールセンターなどの窓口
を設けて電話相談を実施している役所もあります。
●認知症の方の家族の会
●インターネットの利用 等
情報提供や相談できる機関も増えてきています。
◇参考文献
インターネット
厚生労働省HP内
認知症施策
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha
/ninchi/index.html
認知症サポーター
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000089508.html
×みんなのメンタルヘルス
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html
NHK厚生文化事業団サイト内
家族が認知症と診断されたあなたへPDF
https://www.npwo.or.jp/wp-content/uploads/2016/05/ninchisyo_kaigo.pdf
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//ja.wikipedia.org/wiki/認知症
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